肺癌や大腸癌などの治療に用いられる抗癌剤塩酸イリノテカン(商品名「カンプト」「トポテシン」)の副作用の発現を予測する体外診断用薬が、第一化学薬品によって日本で承認申請された。
イリノテカンは効果が強い一方で、白血球減少など重篤な副作用が現れやすい薬剤として知られる。個々の患者の血液から遺伝子の違いを判定して予測、該当した患者は投与量を減らすといった対応が事前に取れるようになる。承認されれば、イリノテカンの副作用発現予測の診断薬は日本で初めて。
申請は1日付で行われた。承認・販売見込み時期などは明らかにしていない。発現予測は、イリノテカンの副作用に関与するUGT1A1遺伝子多型を判定するもの。
イリノテカンは、それ自体はプロドラッグで抗腫瘍活性は低いが、肝臓のカルボキシルエステラーゼなどによって加水分解されて、母化合物に比べ数百倍高い抗腫瘍活性を発揮するSN‐38に変換される。
その後、SN‐38は主に肝臓でグルクロン酸抱合酵素(UGT)によってグルクロン酸抱合を受けて解毒され、胆汁を介して腸管に排泄されることが知られている。そのUGT遺伝子には遺伝子多型があり、酵素活性が落ちると副作用の発現が高まることが報告されている。
問題となるUGT1A1遺伝子には30種種類以上の遺伝子多型があるが、イリノテカンの副作用発現と関連するものとして、プロモーター領域の多型であるUGT1A1*28、エキソン1の多型UGT1A1*6とUGT1A1*27、エキソン4の多型UGT1A1*29、エキソン5の多型UGT1A1*7の存在が知られている。
今回申請となった診断キットは、強い下痢や白血球減少につながりやすいとされる「UGT1A1*28」「UGT1A1*6」「UGT1A1*27」を判定するもの。
判定には、遺伝子解析技術の一つで、操作が簡単で特異性も高いインベーダー法が用いられている。遺伝子増幅過程を必要とせず、特別な機器もいらないという。申請品は、同技術を持つ米国のTWT社と第一化学薬品が共同で開発を進めてきた。
米国では、TWT社が2005年8月に「UGT1A1*28」を判定するキットが承認を受けている。今回の申請品はそれに加えて、日本人を含むアジア人で、イリノテカンの代謝に関与する重要性が高い「UGT1A1*6」「UGT1A1*27」も対象としている。
7日に申請を発表した第一化学薬品は、「患者にあった治療の選択肢を提供する個別化医療に貢献できるものと期待されている」としている。
京都大学大学院薬学研究科の赤池昭紀教授が主宰する薬品作用解析学研究室は、コカ・コーラ東京研究開発センターとの共同研究で、脳機能保護食品開拓プロジェクトを推進する。
認知症やアルツハイマー病など中枢神経変性疾患の発症を予防する物質を探し出し、飲料としての開発を目指す。臨床での評価方法も同時に検討する。3年をメドに商品化への道筋を確立したいとしている。
両者は昨年12月に共同研究契約を締結。今年9月までパイロット的に研究を行う。ある一定の成果が見込まれれば、研究は継続される。
共同研究では、まずスクリーニング系を確立し、神経保護作用を持つ食品由来物質や化合物のうちから、食品素材として応用できる物質をいくつか探し出す。その上で作用機序を明らかにし、認知症などの予防に有望な候補物質を絞り込む。
また、複数の候補物質の組み合わせによる相乗作用も検証し、「最終的には、脳機能を保護する物質の組み合わせを何種類か提案できるようにしたい。エビデンスに基づき予防効果を主張できる飲料の開発につなげたい」と赤池氏は話している。
米国原産の果実「ボイセンベリー」を餌として与えたラットは、アスベスト(石綿)の引き起こすがん「中皮腫」の発症例が少ないことが安達修一・相模女子大助教授(公衆衛生学)の研究グループの実験でわかった。
安達助教授らは、ボイセンベリーに含まれるポリフェノールに発症抑制効果があるのではないかとみて、確認実験を進めている。
実験では、アスベスト10ミリ・グラムを腹部に注入したラット40匹のうち20匹にボイセンベリーの粉末を2%混ぜた餌を、残りのラットに通常の餌を与え、1年間観察した。その結果、通常の餌を与えたラットの14匹が中皮腫を発症したのに対し、ボイセンベリーのグループでは7匹にとどまった。1匹目の発症時期も、ボイセンベリーを与えた方が2か月ほど遅かった。
国内でインフルエンザワクチンを製造する北里研究所、阪大微生物病研究会、デンカ生研の3者は1日、新型インフルエンザ株に対応した「沈降インフルエンザワクチン(H5N1)」について、1月31日までに製造販売承認申請を行ったことを明らかにした。
申請されたのは、高い免疫原性が期待できる不活化全粒子型抗原とアルミニウムアジュバントを組み合わせたH5N1型インフルエンザワクチン。3者は第II相及びIII相臨床試験を昨年12月までに終了している。
このうち北里研と阪大微研は、医師主導治験として実施した。また、同時に研究開発を行っていた化学及血清療法研究所は、現在も開発を継続中である。
第II・III相試験では健康成人に、3週間間隔で2回接種した。その結果、安全性の面では、副反応の大部分が注射部位の発赤、腫脹といった局所反応であり、認容性に大きな問題はなかった。
第I相試験では因果関係が否定できない重篤な有害事象として、突発性難聴が1例報告されたが、今回の試験では同様の事例は報告されていない。有効性については、第I相試験と同様の傾向を示す成績が得られたという。
今回の試験成績から3者は、このワクチンが新型インフルエンザに対する予防効果を有すると判断し、承認申請を行ったもの。なお、同ワクチンは昨年6月に希少疾病用医薬品の指定を受けている。
インフルエンザ治療薬「タミフル」服用後に戸外に飛び出し、トラックにはねられて死亡した岐阜県下呂市の男子高校生=当時(17)=の父親が、同薬と死亡との因果関係を審査するよう厚生労働省に申し立て、実質的な審査なしに却下されていたことが4日、分かった。
父親は「薬害タミフル脳症被害者の会」代表の軒端晴彦さんで、厚労省を相手に却下処分の取り消しを求める訴訟を起こすことも検討している。軒端さんが同日、名古屋市で開かれた集会で報告した。
高校生は軒端さんの長男で、平成16年2月にA型インフルエンザと診断され、医師から処方されたタミフルを服用。直後に自宅から国道に飛び出し、大型トラックにひかれて死亡した。
独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」は昨年7月、副作用被害救済制度に基づき「タミフルとは別の薬の副作用による自殺企図」と判定。軒端さんは不服として、厚労省に審査を申し立てた。
軒端さんによると、不服申し立てに対する同省の決定は昨年12月27日付で「副作用被害救済制度で既に遺族一時金などが支給されており、判定による申立人の利益侵害はない」とした。
軒端さんは「長男が自殺する理由はなく、副作用の原因がタミフルではないという根拠も不明」と話している。
タミフルには16年6月以降、添付文書に「異常行動、幻覚、妄想があらわれることがある」と記載。一方で厚労省研究班は昨年末、タミフルを服用した場合と服用しなかった場合で、異常行動を起こす割合に統計学的な差はなかったとする調査結果を発表している。
世界保健機関(WHO)は4月初旬、鳥インフルエンザウイルスが変異し、人同士で感染する新型インフルエンザが発生したと想定した初の演習を実施する。
世界的な大流行を防ぐためには感染の初期段階での封じ込めが不可欠であることから、人への感染が集中している東南アジアを舞台に国際機関や関係国の連携を確認するのが狙い。
演習では、東南アジアのある国で患者家族のほかに、医療関係者の感染が確認され、初めて人から人へ感染する新型ウイルスが発生した疑いがある、と想定。
当該政府、WHOの本部(ジュネーブ)や西太平洋地域事務局(マニラ)、ジャカルタの東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局に加え、ASEANに備蓄薬を援助した日本が参加し、対策室の設置、備蓄薬の国際輸送など早期封じ込めに必要な意思決定などの手順についてシミュレーションを行う。
具体的な演習内容は今後詰めるが、日本政府の援助でシンガポールに約50万人分が備蓄されている抗ウイルス薬「タミフル」を発生地に輸送するため、飛行機の手配や通関手続きなどについても机上と実地訓練などを検討している。日本では外務省などが参加、WHOからタミフルの輸送状況の報告を受け、訓練の全体状況を日本国内で把握する。
アジアを中心に猛威をふるう鳥インフルエンザは、03年からこれまでに270人が感染、そのうち164人が死亡した。死者は東南アジアに目立ち、最も多いのはインドネシア(63人)で、ついでベトナム(42人)、タイ(17人)、中国(14人)と続く。
WHO西太平洋地域事務局の葛西健・感染症統括官は「新型の発生は場所も時期も予測不可能で、鳥の感染が広がれば広がるほど危険性は高まる」と懸念する。家禽(かきん)類の感染、人の感染とも毎年1月から3月ごろにかけて拡大する傾向にあり、「警戒を強めている」と言う。
各国が製造準備を進める人のワクチンは、新型発生から製造まで半年から2年かかると言われる。またインドネシアなどタミフル備蓄の取り組みが遅れている国もあり、素早い国際協力が重要とされる。葛西氏は「大流行の抑制はワクチンに頼ることはできず、初期の迅速な対応と封じ込めがカギになる」と話す。
妊娠や分娩(ぶんべん)がもとで妊産婦が死亡する確率に、都道府県によって顕著な差があることが、厚生労働省の研究班の調べでわかった。過去10年間の平均をとったところ、最も低い広島が出生10万件あたり1.84人だったのに対し、最も高い京都は10.70人。
一方、胎児や新生児の死亡率を同じ10年間の平均値で見ると、西日本は低くて東日本で高い東西格差が浮かび上がった。研究班は地域格差の原因を分析し、3月をめどに報告をまとめる。
毎年、全国で60人前後の女性が妊娠や出産が原因で死亡している。都道府県ごとに見ると、自治体によっては死亡数がゼロの年もあり、これまで指標として重要視されてこなかった。研究班は今回、国の人口動態調査を基に95〜04年の10年間の平均を割り出した。
妊産婦死亡率の全国平均は出生10万件あたり6.39人。低い広島と最高の京都では、5倍以上の差が生じた。京都は04年だけで妊婦6人が死亡したことが影響した。死亡率が低いのは、広島のほか、愛媛、鳥取、岡山、徳島と中・四国地方が集まる。高い地域には埼玉、千葉、茨城、東京など、関東周辺が目立つ。
一方、妊娠22週以降の胎児の死産と、出産から7日未満の新生児死亡を合わせた「周産期死亡率」についての平均値は、最低の広島は出産千件あたり5.01人、最高の山梨は7.23人で、約1.4倍の開きがあった。中・四国地方をはじめとする西日本が低いのに比べ、関東や東北など東日本が高い。
鹿児島のように周産期死亡率は低いのに、妊産婦死亡率が高い地域もある。逆に、青森や群馬などは周産期死亡率が高いのに、妊産婦死亡率の低さが目立つ。
こうした地域差には、医師数や搬送システムの整備状況、地理的条件など複数の要素が影響しているとみられるが、研究班は、都道府県の担当者や難しいお産を扱う全国の総合周産期母子医療センターにアンケートを実施するなど原因究明を進めている。
主任研究者の池田智明・国立循環器病センター周産期診療部長は「妊産婦死亡の格差の原因や、地域差があるのかどうかについて、各地域の事情を踏まえて分析し、妊産婦死亡率の低下につなげたい」と話す。
田辺製薬と三菱ウェルファーマ(WP)は2日、今年10月1日付の合併に向け基本合意したと発表した。売上高は4000億円規模と、国内の医薬品を扱う企業では第6位となる。両社とも新薬創出に悩み、海外での売上高は全売上高の1割に満たず、事業基盤の強化が迫られていた。三菱WPは脳保護薬「ラジカット」、田辺は生物製剤で関節リウマチ治療薬「レミケード」という柱となる製品を持ち、開発品を含めると循環器・代謝、呼吸器、免疫の領域では厚くはなる。
三菱WPの親会社である三菱ケミカルホールディングスを含む3社は同日の取締役会での決議を経て、基本合意書を締結した。田辺製薬を存続会社とし、三菱WP株1株に対し、田辺株0・69株を割り当てる。
新社名は「田辺三菱製薬」、本社は大阪市。新社は三菱ケミカルホールディングスがその株式の過半数を有する連結子会社となる。代表取締役社長には現田辺社長の葉山夏樹氏が、代表取締役副社長には三菱WP社長の小峰健嗣氏が就く。
合併理由について、「創薬力のさらなる強化と海外事業展開の加速化」を挙げる。そのため、事業規模の拡大と経営基盤の強化により「国内トップクラスの製薬企業へのステップアップが不可欠である」と両社は判断、今回の基本合意となった。
また、ジェネリック事業に参入するとした。三菱化学グループの診断・検査に関する事業も生かしテーラーメード医療への対応も図るとしている。OTC事業は当面存続させる。
MRは合わせると2600人体制となるが、これは国内トップ企業並み。研究開発費は、三菱約480億円、田辺約290億円と、約780億円となるが1000億円には満たない。
様々な組織や臓器になり得る万能細胞として、再生医療への期待が高い胚(はい)性幹細胞(ES細胞)について、国際幹細胞学会が研究実施上の国際指針を作った。
各国での適切な規制実施や国際共同研究の円滑化につなげるのが目的で、欧米や中国、日本など14カ国の研究者や生命倫理学者らが検討に参加した。1日付の米科学誌サイエンス(電子版)に掲載される。
指針は、生命倫理上の問題の大きさなどに応じて、対象となる研究を三つに分類した。
問題が比較的少ないES細胞の利用研究など第1類は、医学生命科学での通常の審査監督手続きでよいとした。第2類のES細胞の新規作製計画は、受精卵などの提供や破壊を含むため、法学や生命倫理などの有識者による厳格審査を求める。第3類は人のES細胞やクローン胚を人や動物の胎内に移植することなどで、当面禁止とした。
また、卵子提供について、提供に誘うような多額の謝礼は否定したが、実費の支払いなどは各国の判断に任せるとした。
ES細胞は、数日培養した受精卵から細胞の塊を取り出して作る。これを基に、患者に必要な組織や細胞を作ることができれば、再生医療の切り札になる可能性がある。
ES細胞研究の規制は国によって様々。米国は政府資金の拠出は禁じているが、統一的な制限はない。受精卵を「生命の始まり」と位置づける傾向が強いドイツやフランスはヒト胚研究を禁じ、韓国は法で認めている。日本も政府は認めている。今後規制を検討する国では、国際指針が参考にされそうだ。
検討に参加した中辻憲夫・京都大再生医科学研究所長は「日本の指針はES細胞の利用計画にまで厳しい手続きを求めている。過剰規制であり、研究の遅れを招いている」と指摘している。
慶応義塾大学、国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所などは、赤ちゃんが言葉の聞き分けを学習する際の脳の発達過程を解明した。短母音と長母音を聞かせる実験で、1歳ごろに言語理解に重要な左脳を使って区別をするようになることが分かった。言語障害のある小児のリハビリなどに役立つ成果。
慶大の小島祥三教授、科学技術振興機構の河合泰代CREST研究員らは、日本語で育てられている生後3カ月から2歳4カ月の赤ちゃん127人に協力してもらい、日本語の特徴である短母音と長母音の区別ができるか調べた。
最後の母音が短い「ママ」と、長い「ママー」という単語を聞かせ、脳内血液量の変化を頭にかぶるだけで計測できる「光トポグラフィー」で調べた。
厚生労働省薬事・食品衛生審議会の安全対策調査会が1日夜開かれ、副作用死が相次いだ肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)について、市販後調査の結果、既存の薬より高い効果を確認できず「積極的に選択する根拠はないと考えられる」との検討結果をまとめた。
イレッサは市販後調査の中で、他の抗がん剤と比較する臨床試験を行うことが承認条件となっており、2003年9月から国内の50施設で490人を対象に行われた。
抗がん剤タキソテール(一般名ドセタキセル)の投与群とイレッサ投与群とに分け比較。投与当初は生存率がタキソテールより劣り、投与開始1年半程度でイレッサの方が上回ったが、優れているとまではいえなかった。
また副作用による死亡例はタキソテールはなかったが、イレッサは3件あった。ただこれは、最新の添付文書に記載された頻度と同程度だった。
日本べーリンガーインゲルハイム(BI)は今夏にも、味の素から導入したインスリンに依存しない新しい糖尿病治療剤として、ナトリウム/グルコース共役輸送担体(SGLT)2阻害剤の臨床試験(PI)を日本で始める。SGLT阻害剤は、大正製薬やキッセイ薬品などが開発を進めており、開発競争が激化するものとみられる。
SGLTはナトリウムとグルコースを体内に取り込む輸送担体。サブタイプとして、小腸に分布するSGLT1、腎臓に分布するSGLT2が知られている。
同剤は、SGLTの働きを阻害することで、糖の生体内への再吸収量が減少し、血糖値を低下させるのが機序。インスリンに依存せずに血糖値を下げることができる。
同剤は、味の素が創製したもので、2004年末に独BIが導入した。げんざい、欧州ではPIにある。
日本では、大正がPII(TS−033)、キッセイがSGLT2阻害剤(KGT−1681)としてPIを進めている。
海外では、大正のTS−033がPIIにあるほか、英グラクソ・スミスクラインがキッセイから導入したKGT−1251とKGT−1681が共にPII、仏サノフィ・アベンティスはSGLT2阻害剤として開発を進めるAVE−2268がPIIにあり、横並びの状況にある。
ノバルティスファーマは、欧米で最近承認されたAII受容体拮抗剤(ARB)バルサルタンとカルシウム(Ca)拮抗剤アムロジピンを配合した降圧薬(海外名:エクスフォージ)の開発を日本で始めた。海外データを活用し、PIIIから着手したという。
配合している両剤は日本でもトップクラスの売り上げ実績がある。ノバルティスによると、日本での治験は最近始めたが、開始時期や試験の規模、申請見込み時期など詳細は明かしていない。
エクスフォージは昨年12月22日に米国で、今年1月18には欧州で承認され、配合しているアムロジピン(「ノルバスク」、ファイザー)の特許失効を待ち、年内中に発売の見通しだ。単剤治療で十分な血圧コントロールができない患者を対象にした二次治療薬として位置づけられる。
海外臨床試験では、5000人以上の患者を対象にした検討で、同剤を投与した患者の約9割が治療目標(拡張期血圧値90mmHg以下、または投与前より10mmHg以上低下)を達成した。
厚生労働省は、出産前後の周産期医療の実態を調査するため、都道府県に対し、管内に設置された総合周産期母子医療センターの「新生児集中治療室」(NICU)の充足状況や他県との連携などについて確認するよう通知した。ベッド満床などを理由に、妊婦が病院に受け付けられないケースが多いとされ、実態把握を進め、対策に生かす方針だ。
NICUの運営については、日本産婦人科医会や研究者の調査はあるが、厚労省が本格的に調べるのは初めて。
同センターは、リスクの高い出産に対応できる医療施設で、昨年7月現在、39都道府県に計61施設ある。NICUの病床数は原則9床以上で、周産期医療ネットワークの中核に位置付けられている。実態調査は(1)受け入れや他県とのネットワーク状況(2)NICUの後方支援などについて−−の2種類。
管内のNICUの充足状況について、不足している場合、具体的な不足数の回答を求める。また▽搬送を受け入れられなかった件数と理由▽センターの空床状況などを提供するコンピューターシステムの設置の有無▽県外への搬送者数−−など、救急体制の機能状況なども調べる。
さらに、ベッド満床の背景とされる長期入院の重症児との関連で、NICU(05年度実績)の平均入院期間、最大入院期間、病床利用率、年間利用者数なども確認する。
田辺製薬は26日、主力薬である関節リウマチ治療薬「レミケード」について、ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎の効能・効果を世界で初めて追加取得したと発表した。
クローン病維持療法や潰瘍(かいよう)性大腸炎などの適用拡大に向け準備を進める。今年度約200億円のレミケードの売上高を2010年度に500億円まで増やす計画だ。
レミケード(一般名はインフリキシマブ)は抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤で、関節リウマチとクローン病の治療薬として販売中。ベーチェット病は全身性の炎症性疾患で皮膚炎や目のぶどう膜炎などが主な症状。ぶどう膜炎の発作を繰り返すと失明する場合もあり、国内の患者数は約1万7000人という。
宮崎県の清武町と日向市東郷町で鳥インフルエンザに感染した鶏が大量死した問題で、清武町でみつかった「H5N1型」とほぼ同じ遺伝子のウイルスが韓国で今月、渡り鳥のマガモの糞(ふん)から検出されていたことが、わかった。
感染経路の解明を進める農林水産省も関心を寄せている。専門家の間では「犯人」として渡り鳥、なかでもカモ類を挙げる声が出てきた。
韓国西海岸側の天安(チョナン)市など4都市では、昨年11月からこれまでに、鳥インフルエンザが5回発生した。同国農林省によると、ウイルスの遺伝子はすべて清武町と同じ中国・青海湖タイプ。しかも、同市内で採取されたマガモの糞から、同じ青海湖タイプのウイルスが検出された。
渡り鳥の飛来ルートとしては、シベリアや中国東北部から朝鮮半島の西海岸沿いを南下し、九州にいたるコースが知られる。農水省の感染経路究明チームのメンバーでもある金井裕・日本野鳥の会主任研究員によると、マガモもこのルートで11〜12月にかけて日本に飛来するとされる。
韓国農林省によると、天安市で鳥インフルエンザに感染した鶏の大量死が発生し、マガモの糞からウイルスが検出されたのは今月19日。だが、この糞は昨年12月下旬に採取されていたという。
糞の採取と飛来の時期が重なることなどから、金井主任研究員は「カモ類を感染源として有力視する見方は多い」という。
感染経路究明チームの座長を務める伊藤寿啓・鳥取大教授(獣医ウイルス学)によると、感染源には(1)野鳥が運んできた(2)人の靴などに付いて運ばれた(3)物に付いて持ち込まれた、などが考えられるという。
だが、「渡り鳥犯人説」は当初からあった。清武町のウイルスは、中国西部の青海湖で05年に確認されたものと遺伝子が近いうえ、「ウイルスは鳥の体内では増殖しても、人や物に付着した場合は弱まるはず」(伊藤教授)だからだ。
ただ、どうして養鶏場にウイルスが入り込んだのかは謎のまま残っている。鶏舎は金網と防鳥カーテンで外部から遮断されていたからだ。
大槻公一・京都産業大教授は「養鶏場への人の出入りや関係者による消毒の徹底ぶりなど、さらに詳しく調べる必要がある」と話す。
寄生虫感染が、実は多発性硬化症(MS)患者に利益をもたらしている可能性がアルゼンチンの研究によって示され、医学誌「Annual of Neurology」1月号で報告された。
過去の研究から、寄生虫感染が動物の自己免疫疾患の経過に影響することがわかっていたが、ヒトを対象に寄生虫感染とMSとの関係を調べた研究は初めてだという。
この研究は、寄生虫感染のあるMS患者12人と感染のないMS患者12人を対象としたもの。両群の患者の疾患経過はいずれも類似するものであった。約4.6年の追跡期間中、寄生虫感染群では3回の臨床的再燃(病状がぶり返すこと)がみられたのに対して、非感染群では56回の再燃がみられた。また、感染群の患者は、MSによる身体障害が増悪する比率も低かったという。
このほか、感染群ではサイトカイン抑制物質を産生する細胞の数が大幅に増大していることが突き止められた。MSには、調節蛋白(たんぱく)であるサイトカインの産生による炎症反応が関与している。
今回の知見は、寄生虫感染による自己免疫反応が、MSによる通常の炎症反応を減少させるという考えを裏付ける証拠となると著者らは述べている。
シェリング・プラウは18日、小腸でのコレステロール吸収を阻害する新しいタイプの高脂血症治療薬「ゼチーア錠」(一般名エゼチミブ)の販売承認を取得した。
生体内のコレステロールは、肝臓で合成されるか、小腸で吸収されるかに大別される。このうち小腸で吸収されるコレステロールは、肝臓から小腸に排せつされる胆汁性コレステロールと、食事に含まれる食事性コレステロールがある。
ゼチーアは、小腸での胆汁性と食事性のコレステロール吸収を選択的に阻害し、血中のコレステロールを低下させるという点において、既存の高脂血症治療剤(スタチン系、フィブラート系など)とは全く異なる新しい作用メカニズムを有している。
ゼチーアは、効率的にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させ、ファーストラインとして単独投与、ならびに各種スタチンで十分な効果が得られない患者に対しては、スタチンとの併用投与することにより、LDLコレステロールをさらに低下させる効果が期待されている。
厚生労働省は、国と地方自治体が治療費を助成する不妊治療について、妊娠数や出産数などの実績を2007年度から全国的に調査することを、25日の検討会で決めた。
不妊治療は経過や成果が詳しく分かっていないケースが多く、05年度は約2万6000組の夫婦に助成した事業でも、受給者数や給付金額程度しか把握できていない。厚労省は実態を調査、分析して事業の充実に生かしたいとしている。
調査では、不妊治療を実施した医療機関が、治療方法や経過、妊娠や出産後の状況などを日本産科婦人科学会の登録システムに入力。厚労省は集まったデータから、治療、妊娠、出産、低出生体重児の数などを集計し、解析結果をホームページに掲載する。
厚生労働省の「新型インフルエンザ専門家会議」は19日、フェーズ4以降のガイドライン(GL)案を審議した。GL案は、早期対応戦略案やワクチン接種、抗インフルエンザ薬など13本。感染拡大防止を柱に、ワクチンの開発状況に応じた接種対象者、抗インフルエンザ薬投与対象者の優先順位を明確に示すほか、抗インフルエンザ薬流通の規制なども行っていく。今後は、パブリックコメントを行い、広く国民の意見を聞くほか、保健所など現場からの意見聴取なども行い、3月にはGLをまとめたい考えだ。
GL案は、▽発生初期の早期対応戦略案▽積極的疫学調査▽検疫GL案▽職場や個人、一般家庭・社会▽医療体制▽医療施設の感染対策▽ワクチン接種▽抗インフルエンザ薬▽情報提供・共有(リスクコミュニケーション)−−など13本に及ぶ。
新型インフルエンザ発生初期の早期対応戦略案では感染拡大防止策が中心で、住民へ抗インフルエンザ薬(タミフル)の予防投与を実施する。方策としては、▽家庭・施設内予防投薬(目的は感染拡大防止:対象者は症例の家庭・保育施設・学校・職場等内の全員)▽接触者予防投薬(個人の発症予防:症例の接触者)▽地域内予防投薬(ウイルス封じ込め:市町村内全員)−−の3段階で取り組んでいく。
ワクチン接種GL案は基本方針として、[1]フェーズ4Aの段階で専門家会議の意見を聴いた上で医療従事者・社会機能維持者へのプレパンデミックワクチン(ヒト−ヒト感染を起こす前に、鳥−ヒト感染の患者または鳥から分離されたウイルスを基に製造されるワクチン)接種を開始[2]新しいウイルス株の特定後、パンデミックワクチン(ヒト−ヒト感染を生じたウイルスまたはこれと同じ抗原性を持つウイルスを基に製造されるワクチン)の生産を開始[3]パンデミックワクチンが製造され次第、医療従事者、社会機能維持者から接種を行う−−といった考えが提示された。